25th.Apr.2023
マルコスの 「贈り物」が訪日で奏功
マルコス大統領の訪日を成功に導いたのは、おそらく計画的ではなく、間違いなく理にかなった2つの出来事だった。
1つ目は、米軍のプレゼンス(存在)を拡大・深化させる「防衛協力強化協定」(EDCA)の実施を加速することで米国とフィリピンが合意したことだ。1月にロイド・オースティン米国防長官が訪問した際に合意された。
EDCAはニノイ・アキノ大統領時代の2014年に締結されたが、ロドリゴ・ドゥテルテ前大統領によって事実上保留されていた。これは、1991年に比米基地協定が破棄されて以来初めてフィリピン国内の5つの軍事施設に米軍が駐留することを認めた内容だ。ただし、在日米軍の存在を定めた日米地位とは違って、あくまでフィリピン軍の基地内に米軍は駐留し、基地の管理権は米側にある。
この協定には、フィリピン北部カガヤン州のフィリピン軍基地内に3カ所、パラワン島に1カ所の軍事施設を指定し、米軍が利用することを認めた。中国と台湾、中国とフィリピンの間で南の西フィリピン海での緊張によって起こりうる脅威に対する安全を強化する。
フィリピン国防省の声明によると、米国は「EDCAに基づく既存の5カ所のインフラ投資に対して8200万ドル以上を割り当て、これらの投資がフィリピンの地元コミュニティの経済成長と雇用創出を支えていることを誇りに思う」とアクセス拡大の代償を支払う。
オースティン国防長官訪問中に締結されたもう一つの合意は、ドゥテルテ前大統領の時代に中断されていた南シナ海での共同海上パトロールの再開だ。
この合意は、フィリピンでの軍事演習への参加を含め、日本の自衛隊の訓練や共同作戦の実施を認めることへ道を開くとみられる。
米軍とフィリピン軍の軍事演習には、既に自衛隊はオブザーバーが参加している。日本はまたフィリピンの沿岸警備隊に船舶を提供している。
マニラタイムズ紙は、日本の安全保障の専門家の佐藤丙午・拓殖大学教授の以下のような言葉を引用している。 「地域の安定やシーレーン確保、中国の海洋進出に対する抑止力を考えると、フィリピンとの協力関係の深化は日米の安全保障にとって極めて重要だ。フィリピンの基地にアクセスできるようになれば、台湾有事の際の日米同盟の戦略的選択肢を広げることができる」